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石井のコラム
“わかりやすい”とは何か?
“わかりづらい”ポスト
先日、オフィスの近くの郵便ポストの表示が変更になりました。
ところがこのポストの差し出し口の表示が非常に“わかりづらい”のです。 右側の大きな差し出し口には「前橋市 大型郵便・速達郵便」
そして左側の差し出し口には「その他の地域の手紙・はがき」と書かれています。
私は最初、このポストに「前橋市内あてのはがき」を入れようとしたのですが、一瞬どちらに入れてよいか迷いました。同様に「東京あての速達郵便」、「札幌あての大型郵便」を投函するときも、一瞬、どちらにするべきか迷ってしまいました。
“分かる”とは“分けられる”ということ
“わかる”という言葉の語源は、「分離する・区別する」という意味の「わく」という動詞に、可能の意味を表す助動詞「る」がついたものだといわれます。つまり、“わかる”とは、本来、「分けることができる」という意味なのです。だとすれば“わかりづらい”というのは「分けることが難しい」という意味になります。
その意味で、この新しい郵便ポストの表示は、まさに「わかりづらい=分けることが難しい」表示でした。なぜならその郵便物を右と左の差し出し口のどちらに出したらよいのか、瞬時に「分けることが難し」かったからです。
ではなぜ、このポストの表示は「分けることが難しい」のでしょうか。
それは、複数の分類基準が整理されることなく一緒に表示されていたからです。じつは、表示されている言葉をもとに数えると、このポストの表示が私たちに示している分類基準は、以下の4つになります。(カッコ内は表示されている語から必然的に考えられる言葉)
| 差出口 | 「左側」 | 「右側」 |
|---|---|---|
| 基準1 | その他の地域 | 前橋市 |
| 基準2 | (普通郵便) | 速達郵便 |
| 基準3 | (小型?郵便) | 大型郵便 |
| 基準4 | 手紙・はがき | (それ以外?) |
そして、ある郵便物の性質を、これらの分類基準に照らし合わせたとき、その性質が、右と左に分かれてしまうと「分けること が難しい=わかりづらい」ということになるのです。
たとえば、「その他の地域の大型郵便」という性質を持つ郵便物を出そうとするとき、「その他の地域」という性質は左側の差し 出し口の性質ですし、「大型郵便」という性質は、右側の差し出し口の性質です。
このように、一つの郵便物が二つ以上の性質を持っていて、それぞれの性質が左右に分かれてしまうと困ってしまいます。投函するときに、どちらの差し出し口に入れたらよいか迷ってしまうのです。「前橋市内あてのはがき」や「はがきの速達」を出そうとするときも、同じよ うな混乱を招きます。
適切に「分ける」ことが重要
では、このような混乱はどうすれば解消できるでしょうか?
つは、この表示に混乱した人は多かったらしく、しばらくしてポストの表示の下にあたらしく、「(お願い)」と称した、注意書きが貼られ ました。
「(お願い)」にはこう書いてあります。
お願い
- 左側にはその他の地域あての手紙・はがきをお入れ下さい
- 右側には前橋市内あてのすべての郵便物と大型郵便・速達郵便、国際郵便は、すべて「右側の差し出し入口」に、お入れ下さい。
まだ“わかりやすい”と言えるものではありませんが(特に右側は悪文です)、だいたい言いたいことは分かってきました。郵便局としては、このように投函して欲しいようです。
左側
前橋市外あての普通郵便
右側
- 前橋市内あての普通郵便
- すべての地域あての速達郵便
- すべての地域あての大型郵便
- すべての地域あての国際郵便
いかがでしょう? すこしは“わかりやすく”なったでしょうか?
私の上記の表現では、分類の基準は二つにしてあります。「宛先」(=すべての地域/前橋市内/前橋市外)と「郵便の種類」(=普通/速達/大型/国際)です。
そしてすべての郵便が上記基準の組み合わせで分類できるかどうか、なおかつ一つの郵便物が二つの分類に属してしまわないかどうかをチェックしたうえで、それを右と左の差し出し口に振り分けました。
このとき私が意識したのは以下の二つです。
- なるべく基準は少なくする
- “ヌケ”と“ダブり”が無いようにする
そしてこれは、小論文を書くときも同じです。
一つの概念には一つの言葉を使い続け、あれこれ言葉を増やさない(=基準を増やさない)。そして「一文一義」「一段落一義」を守って、内容に“ヌケ”と“ダブり”が無いようにすること。
つまり、“わかりやすく”相手に伝えるためには、内容や文章を適切に「分ける」、そしてそれらをきちんと区別しつづけることが大事なのです。
練習問題は日常に転がっている
今回のポストの例に限らず、身の回りにはさまざまな“わかりづらい”が転がっています。
これらの“わかりづらい”をどうやったら“わかりやすい”に変えることができるかを考えることは、小論文に限らず自分が相手に何かを伝えようとする時の、とてもよい練習になります。
ぜひ、身の回りの“わかりづらい”に出会ったときは、ちょっと立ち止まって、どうやったら“わかりやすく”なるかを考えてみてください。
そうすることで、あなたの“わかりやすく”相手に自分の意見を伝える能力は、確実にアップすることでしょう。(了)
《おまけの練習問題》
手始めに、今回のポストの表示をさらに“わかりやすく”してみましょう。
私が作った表現で、だいぶ“わかりやすく”なりましたが、このままでは長すぎて、プレートとして表示するわけにはいきません。もっと簡潔な表現で、この分類を分かってもらう方法はないでしょうか?(実はあります)
ぜひ考えてみてください!